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田舎の噂話の効果
中山間地にある、さとこの嫁ぎ先のはてるま集落では

ひとの噂話が毎日のトピックスです。


何の病気でどの病院に通ってるとか、

何曜日が通院日で、
そのあと、どこのお店で何を買っているとか、

離れて暮らす親戚の家族構成や年齢や仕事、連休はいつごろかとか、


一軒一軒、一人一人の基本データに関して

ケアマネージャーの上を行く熟知ぶりで


集まるとそんな話題で意見交換が展開され

全員がほぼ同じ情報を共有するのです。




先日の事。


週二回の移動購買車が
演歌をガンガン鳴らしながらいつものコースを回っていて

通りから奥に入った雪子おばあさん宅に行ったのに
雪子さんは出て来られなかったそうな。


購買車運転手の近藤さんは、

変だなと思いながらも
雪子さん宅を後にし

次の巡回先、はてるま前に停留。


ここは

はてるまのお向かいさんのYさんと、とおるちゃんの妹一家端井と、はてるまの三軒が固まっているので

お気に入り商品を我先にゲットしようと、みんな待ち構えていて

白熱したバトルが
いつも展開されてます。




軽四貨物車の移動購買車の荷台には
日用品や乾物、日配食料品、冷蔵・冷凍食品、注文の品などがぎっしり。


担当職員の近藤さんが
開店準備をしながら


「今日は雪子さん留守かなあ。鍵が開いとるけど出てきならだったよ。
はてるまさん、なんか知っとる?」


「いんや。何も聞いとらんよ。
出掛ける予定はないはずなのに、そりゃ変だぞ。」


はてるま母は、買い物そっちのけで
坂を下ったところの雪子さん宅へ行ってみることにした。


雪子さんは96歳。
97歳のご主人が施設に入居されて、今は独居だ。


さとこがはてるま集落に嫁いだ頃には
雪子さん夫婦はすでに耳が遠くて

訪ねて行ってインターホンを押しても応答がないし

玄関口で絶叫しても全然気づいてもらえないおうちではあったけど


この日も
裏口や履き出し口やら、あちこちから声をかけても返事がなく


はてるま母は、思い切っておうちの中に侵入した。


雪子さんの名前を大声で呼んで回るが、
シーンとしている。


二階に上がると
布団が敷いてあった。


中は空。


隣の部屋の床に、乾いた入れ歯が落ちている。


雪子さーん!どこだあ!


トイレを覗くが雪子さんは居らず

トイレスリッパが
男子便所に片方、もう一方は女子便所前の廊下にひっくり返しで転がっていた。


はてるま母、いよいよ不安になり

浴室、台所、裏口、と片っ端からドアを開けるが


どこを探しても雪子さんはいない。


移動購買車の近藤さんも、もう一人にお店を任せて

追いかけてきて、不安そうに玄関で待っている。


はてるま母、同じところも繰り返し探した。


おかしい
家の中に居ないわけないのに、と

ふと、スチール戸棚の裏側のスペースが気になった。

戸棚と壁のその隙間には、
寝具や、ビニール袋に入ったオフシーズンの衣類や、衣装ケースなどが積み上げてある。


三つ折りの白いマットレスがあり、

何か挟まっているのか
折り目が不自然に大きく開いていて…


あっ!
あれは白髪じゃないか?!


反対側に回ると、

雪子さんが
マットレスに頭を突っ込んだ状態で倒れていた。


半裸の身体は紫色で固く冷たくなっている。


雪子さん!
雪子さん!


はてるま母が大声で呼ぶと、雪子さんの顔がわずかに動いた。


まだ間に合うぞ。


玄関で待つ近藤さんに、
「居たよー!生きてるよー!はよ救急車呼んで!」と叫ぶ。


そして、小さく干からびたような雪子さんを毛布で包んで

救急車が到着するまで
ひたすら呼び続け、身体をさすり続けた。


救急隊が到着すると

はてるま母、「雪子さんは血液の癌の治療で医大に通院しているから、医大に運んでっ」と頼み

あたりを見回して
布団の枕もとにあった保険証一式をつかんで、搬送に同行。


社会福祉課と警察にも通報して、
関東に住んでいる子供さんたちに連絡してほしいと伝えた。




雪子さんは緊急搬送から四日目に
無事、意識を取り戻しました。


癌の合併症の
高カルシウム血症による昏睡だったらしいです。


倒れた時と変わらず
認知症状もないままですが


もう独居は無理とのことで

退院後は高齢者住宅へ入居することが決まり、
只今手続き進行中。


雪子さん、

死を意識したことが無かったようで

自分がいなくなったあとの家の管理など

子供さんたちが聞いても何もおしえてくれなかったそうです。


今回の件で

どこの金融機関の通帳があるかとか
印鑑や家の権利書の在処などを初めて子供さんに明かし


子供さんたちは、はてるま母を「一家の恩人」と称賛しまくりだったって。


後日、

地元テレビ局の『まちのホットなニュース』のコーナーで

高齢化が進む地域での移動購買車の人命救助の活躍が放映されました。


はてるま母も取材を受けたんだけど

事前に知らされてなかったため


畠から戻ったばかりで

ほっかむりを脱いでぺったり貼りついた髪で

元の色もわからなくなっている作業シャツの胸元も大きくはだけた状態の

汗と枯草まみれのバストショットが


高画質なアップで放映されてしまいました。


その番組を、
とおるちゃんの妹、端井の夫が録画してくれていて


自分の姿を見た義母、

「わかっとったら眉毛ぐらい描いただに」と
ひどく気落ちしていたそうな。



はてるま集落の人たちが
日々、噂話の研鑽を積んでいたため


独居の雪子さんの生活状況も通院状況も把握でき、

早期発見、的確な処置が迅速に行われ

一命を取り留めたケースでした。


噂話って、大事ですね。




噂話についてのこんな記事を見つけたんですけど
  ↓
カラパイア


イタリア、パヴィア大学のナターシャ・ブロンディーノ博士の研究から

他人について話すことで、

脳内の愛情ホルモン、オキシトシンが分泌され、
情緒が安定し、精神的に安らぐことができるって書いてありました。


雪子さんを救った噂話、

はてるま地区の婦女連のみんなにも健康効果抜群。


噂話、万々歳です。 ヽ(^o^)丿 
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[2018/07/21 23:24] | ・主な登場人物紹介 | page top
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